NHK Eテレの5分間帯番組「まる得マガジン」のテキストをつくりました。2015年2月~3月に放送の「口元エクササイズ」。素敵な歯科医の宝田恭子先生が講師となり、8回にわたって「口元から若くなる方法」「口内ケアのメソッド」などをお届けします。
テキストづくりでは、新しい知識を一気に学びますが、今回もいろんな発見があって、とても楽しかったです。その中に「中医学」と関係のありそうな内容を見つけたので、このノートに記しておこうと思います。
キーワードは「安静時空隙」。歯科の世界では常識だそうなのですが、不勉強な私にとっては〝初耳ワード〟でした。
左の写真を見てください。リラックスして座っているとき、歯と舌の状態がどうなっているか…。詳しくは番組を見ていただきたいので省きますが、実は、いい状態なのはA。上下の歯の間は少し空いていて(これを安静時空隙という)、舌先は上の歯の根元~上あごに触れています。でも、現代人の多くは、AではなくBの状態になっているそう。
では、なぜBになりやすいのか。宝田先生が指摘するのは姿勢の悪さです。スマホ、PC、食事中の姿勢を思い出すと、下のように猫背になっていることが多くないですか? この姿勢だと、自然と口内はB、つまり安静時空隙がとれない状態になるのです。
中医学の診断に、舌の状態を診る「舌診」があります。舌の周囲に歯の痕がつく「歯痕舌」は、「気」が虚弱で水分代謝が悪く、舌がむくんでいるときになる舌。でも、舌がむくんでいなくても、安静時空隙がなくなり、舌が通常の位置より落ちているときにもなるなのではないか…と私は思うのです!
というのも、私に思い当たるところがあるから。私は、どちらかというと水分が足りたい体質で、舌がむくんで、ぼてっと胖大になることはまずあまりありません。でも、舌の縁に歯型がつくことはあるんですよ…。これって、仕事柄、前かがみになることが多く、舌が下がって歯の裏にあたるために「歯痕舌」になっているのではいか…、そんな気がします。
考えてみれば、猫背は典型的な「虚証」の姿勢。こんな姿勢で食事をすれば、いきつくところは「歯痕舌」の証である「脾陽虚」ということになりますよね。薬膳の仕事は、日々「何を食べるか」を考える仕事ですが、中医学という広い視点で考えるならば、食べる姿勢や日常動作にも目を向けることが必要ということでしょう。
今回のお仕事を通じて、そんなことを教えてもらいました。
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