このところ禅寺に縁がある。先週は鎌倉の建長寺を取材し、禅の呼吸法を教わった。そして、先日、国立博物館の「特別展:栄西と建仁寺」を見に行った。鎌倉建長寺は、栄西が開いた臨済宗のお寺。終わる前に行こうと思っていた展示だが、建長寺に行った直後のこのタイミングは絶好だったな。
鎌倉時代、仏教を学ぶために中国に渡った僧は数多い。彼らは当時の中国で大きなカルチャーショックを受け、仏教の教え以外にさまざまなものや文化を持ち帰っている。栄西もそのひとり。生涯で2度、宋に渡り、茶を持ち帰ったことで知られている。今回の展示には、栄西が書いた『喫茶養生記』の実物があった。喫茶×養生…。なんかおもしろそう、と思っていたら、売店に文庫本が置かれていた。もちろん購入。さっそく読んでみると、その内容は実に興味深いものだった。
栄西によれば、唐代の中国では、役人が中国南部の広州に赴任すると、ほとんどの人が熱帯地方の温疫病にかかり、10人中9人が生きて都に戻ってこれなかったという。しかし、広州の人は温疫病に強い。それは、広州の人が、よくお茶を飲むからだと栄西はいう。広州は温熱の病が多いうえ、美食の都でもある。熱病や食べ過ぎによる病を予防するのにいいのがお茶なのだと分析しているのだ。当時の広州人は、食前に檳榔子を喫し、食後にお茶をたくさん飲んだそうだ。
栄西は、お茶の苦味を五臓と結びつけ、人の生命にとって最も重要な「心」を養生する効果を力説している。五臓を健康に保つには五味をバランスよくとることが大事だが、苦味は他の4つの味より取り入れる機会が少ないから、意識してとるといいのだとも言っている。
GWの後半は、八十八夜の新茶の時期。『喫茶養生記』をゆっくり読みながら、薬膳の勉強を復習してみようか…。そんな気分になっている。
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